壊れる地産地消

 
東京電力福島第一原発の事故が、地元の食品を地元で消費する地産地消の動きにも影を落としている。放射能汚染に敏感な首都圏では野菜の直売店の売り上げが激減し、インターネットで原発から遠い産地の野菜を購入する人が増えている。デパートやスーパーでも、売れているのは西日本産だ。 (編集委員・吉岡逸夫)

 昨年、局地的に放射線量が高いホットスポットと報道された千葉県柏市。同市高田の直売店「かしわで」の店頭には、地元の青首大根やブロッコリー、同県流山市産のサニーレタスや白菜などが並ぶ。値段は安いが、平日とあってかお客はちらほら。
 店員は「土日には入場制限するほど混んでいたが、震災後はめっきり減った。放射能検査はしているのですが」と浮かない顔。

 東京・銀座のデパートの地下野菜売り場には全国の野菜が並ぶ。徳島の大根、長崎のジャガイモ、宮崎のゴボウなど西日本産が多い。冬のせいもあるが、東北産は岩手のホウレンソウ、宮城のチヂミユキナなどわずかだ。
 売り場の担当者は「南の野菜の方がよく売れる。京野菜なんか飛ぶように売れていた。安いものや関東のものは敬遠されますね」と話す。

 食の安全や環境保全に取り組む農家を認証し、応援するNPO法人日本GAP協会の武田泰明専務理事によると「地産地消は壊れている。東北・関東では軒並み打撃を受け、閉じた直売店もある」という。一方で、遠方の野菜を購入できるインターネットやスーパーマーケットの販売は伸びている。

 野菜の宅配便で知られる「らでぃっしゅぼーや」の広報担当者は「ネット販売は震災後二倍に伸びた。北海道と西日本の産地限定セットボックスは三倍以上」。

 農林水産省によれば、全国の直売所の数は二〇〇五年に約一万三千店。五年後には約一万七千店に増加し、本来なら地産地消傾向にあったはずだが、震災と原発事故が流れを変えた。
 「かしわで」の染谷茂社長は「ここは東京の通勤圏なので人口も多く、客足も定着し、安心していたが、震災で逆転。昨年は三割ぐらい落ち込んだ。うつ病になった農家の人もいる」と明かす。
 どうしたら、地産地消が取り戻せるのか。
 武田専務理事は「消費者は農産物一つ一つの数値を見ているわけではない。ちゃんと安全性をアピールできた所は成功している。店の姿勢が問われている」と話している。

(2012年2月7日 夕刊 東京新聞より)

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